光と影のあじさい
紫陽花は雨に濡れて水滴にみずみずしく光っている姿が一番美しい…というイメージがずっとありました。
だから雨上がりが一番よくて、反対に、太陽が燦々と照るような晴れの日はちょっと干からびた感じになって、色もきつく反射してしまってよくないのかと思っていました…。
でも、ついこの間、少し気持ちの変わる出来事がありました。
曇り予報が出ていたのでちょうどいいかな、と思って出かけたのですが途中からきれいに晴れて、日差しがさんさんと照りつけてきました。
困ったな、あじさいも暑くてかわいそうだな、と思いながら見てみると、あじさいの子たちもだいぶまいっているらしく、葉の外側がちりちりとレース状になったり、花びらも少し色あせて、黄色や緑やピンクをおびたベージュ色など、普段見られない不思議な色に染まっていました。
でも、そんな午後の強い強い日光の中で眺める光景は不思議な神秘的な感じに満ちていて、見つめているうちにだんだんと、ふだんイメージする紫陽花とは違う別の植物のような不思議な世界に魅せられていきました…。
雨の日にはやわらかく繊細に思える紫陽花の花びらは、強い日差しの中ではむしろ硬質で、アンティークレースのようなしっかりとした生地で作られているように思えました。
お別れの時期が近づきつつある頃の紫陽花は、むしろ透き通っていって透明な色に近づき、その繊細な花びらにうっすら浮かび始めたベージュ色のしみは、じっと見つめていると、あえてヴィンテージ加工をほどこしたリバティのレースやリボンのようにかわいらしく、みずみずしさを失って反り返り始めた花びらも、小さな無数の蝶々たちが集まっていて、今にも飛び立ちそうな光景に見えてきます…。
特にわたしが魅了されたのは、午後の強い光のコントラストの中で、深い影に彩られた紫陽花の花の美しさでした。
影絵のように、くっきりとした影が葉の上に描かれ、花びらのへりのちょっとくるっとなったところの丸みや、そりかえったり身を寄せ合ったりして作る、複雑な影が、まるでレース模様のように紫陽花というお花の不思議な形をくっきりと浮かび上がらせていました。
雨の日に出会える、しっとりとした優しい、はかなげな紫陽花も大好きなのですが、晴れた日の午後に眺める紫陽花はもっと強く、シックでアンティークな美しさに満ちていて、同じお花でこんなにも違った顔を見せてくれるのか、と、何だかうれしい気持ちになりました。