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    Reflets dans l'eau:

 水の反映

透明な湖や池の水面に反転して映る影の作りだす不思議な

情景が大好きで、いろいろな場所に行きました。

印象派の絵画のように細やかに水の様々な側面を描写した、

ラヴェルやドビュッシーの音楽もいっしょに聴きながら

のんびりとごらんください。

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“Reflets dansl'eau” (Images♯1,L110)
                                               Claude Aschille Debussy                               pf.Arturo Benedetti Michelangeli

「水に映る影」  (「映像」 第一集)

    クロード・アシール・ドビュッシー

“Ondine” (Gaspard de la nuit:

    3 Poèmes Pour Piano D'après Aloysius Bertrand
 Maurice Ravel    

 pf. Arturo Benedetti Michelangeli

「水の精」  (「夜のガスパール」)  モーリス・ラヴェル

              

“Jeux d'eau”                        Maurice Ravel                                        pf.Sviatoslav Richter

「水の戯れ」                 モーリス・ラヴェル

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「水の反映」                           COROMICO

 

 まだとても小さい時、何気なく水たまりを飛び越そうとしてジャンプをしたら、そこに映る青空がきらりと光って、思わず空の無限の広がりの中へ

落ちてしまうような気がして、泣き出してしまった記憶があります。

 透明な水面に、空や木々の葉が反転して映る、その不思議な情景に

魅せられてしまって以来、小さな水たまりでも、葉に落ちた水滴でも、水があれば必ずそれをのぞきこまずにいられないほど、大好きになって

しまいました。

 

「まるでオンディーヌ(水の精)に魅入られたみたいだ」と、小さな頃、父が

少し本気で心配していました。

 「オンディーヌ」というのは直訳すると、小さなさざ波という意味で、水に

棲む精のことを指します。

 ヨーロッパでも中世から、アーサー王伝説にも登場する「湖の貴婦人」の伝承や「メリュジーヌ」の伝説があり、湖の中には水の精たちが棲んでおり、人間を遠ざけて暮らし、そこに生息する生き物たちを守っていると

信じられてきました。

 

 主にそういった伝承はブルターニュ地方やアイルランド、スコットランドにわたっていったケルト民族のもので、吟唱詩人たちによって伝承されてきた伝説を聞くと、水や湖に棲む精というものは、必ずしもはかなげで美しく

やさしげなものではなくて、誓いや約束を違えると、容赦なく罰を下す、

不気味で、はかり知れない存在として思い描かれていることに気づいてちょっとした衝撃を受けます…。

 中でも、かなしい伝説がブルターニュ地方に伝わっています。

 昔、反映を極めたイースという街があったのですが、水の精との間に

生まれた王女がキリスト教の教えを破り、享楽と背徳を繰り返したため、

ある日大洪水が起こり、懲罰のために都ごと水中に沈められたという

ものです…。

  

 移り変わってゆく水面の写真を撮っていると、わたしの頭の中で、いつも

ドビュッシーの「水の反映」や「水の精」が自然に流れ始めます。

 ずっと聴いていると、まるで体全体をつめたい水の波で幾重にも

包まれて、水の底の方へだんだん引き込まれていくような、おどろっとした不思議な音楽で、ヨーロッパの人の持っていた水というものに対する意識は恐ろしいものだったのかな、という気がしてきます…。

 

 特に「水の精」の方は19世紀の詩人、ベルトランの詩、「オンディーヌ」に着想を得ているためか、雨の日に、窓ガラスに激しくたたきつける水滴の

小さなひと雫をつたってさえ、中へ入ってこようとする水の精の不気味さ、

かなしさに鳥肌が立つような気がします…。

 一方、ラヴェルの「水の戯れ」や「水の精」の方は、ジロドゥやフーケの

戯曲、「オンディーヌ」を思わせるような優しさがあり、不思議さ、

神秘性の中にもどこか懐かしさ、光り輝く水滴をまとった美しい女神

のようなはかなげな美しさ、水というものの柔軟さ、純粋さを感じられます。

 同じ水でもこちらは水面に反射する影のおぼろげな優艶さ、光を反射して美しく光り輝く、透明な水の、恐ろしくもやさしげな側面を描いているのかも

しれません…。

 

 夏や春のよく晴れた日の木陰に映る水面は、そんな伝説や、水の底の

影にひそむ恐ろしさを感じさせないほど穏やかで、明るく光り、透き通って

います。

 水面に反転して映る世界は、実際の世界よりも少しあわい色をしていて、

太陽の光をたくさん受けてきらきらと光ったり、曇りの日には、水墨画の

ようなモノトーンの色調でにぶく光ったりしています。

 その繊細な水面に、ちょっと鯉が顔をのぞかせたり、木の葉が落ちたり、

とんぼが留まったりすると、たちまち水紋が幾重にもひろがって、水の中の世界を静かに揺り動かします。

 

 たしかにそこにあるのに、こんなにもはかなげで、かすかな風や光で、

形を変えたり色合いを変えたりしてどんどんうつろっていく、不思議な

情景にいつも目を奪われてしまいます。

 そんな情景を見つめていると、ドビュッシーの「沈める寺」のように、水面の下には、もしかしたら本当に、はるか昔に沈んだ、水中の街や寺院があるのではないか、という気がしてきます…。

 

 20.Luglio.

 

  「流れ泳ぐせせらぎは水の精
  うねりながら続くのは水の小径
  火、大地、空気の三元素をたばねて 水の流れと共に
  湖の底に建てられているのが私の住む宮殿なの
です

(ルイ・ベルトラン「オンディーヌ」(『夜のガスパール』)

 

        

 

 

 

 

 

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