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L'arborare della primavera:  春の夜明け

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「春の夜明け」                                     COROMICO

 

 京都に桜が咲き始めた頃、まだ真っ暗なうちに家を出て、自転車で近くの桂川ぞいの道を走っていました。

 

 大好きな桜の樹の下にさしかかった時、突然、朝日が昇り始めました。

 それまで濃紺色の闇に包まれていた青の時間は終わり、川の水面も空も、一面

燃え上がるように染まるオレンジの色とともに、光あふれる空間が、ほどけるように

開けてゆきました。

 

 夜明けの瞬間は、どんな時でも特別で神秘的ですが、春の夜明けは中でも

ドラマティックで荘厳な気がします。

 

 ロイヤルブルーの闇に包まれた空の中から、突然、光が湧き上がってきて、地平が

開ける瞬間はとても力強くて、新しいことが始まるという予感にいつも胸が震えます。 

 突然強い光に溢れ始めた空には、それまで見えなかった桜の花たちの影が浮かび

上がり、気がつくともう、頭上には一面に、満開の桜たちが咲き乱れています。

 

 そんな光景に出会うたびに、世界で最初に作曲されたと言われる、モンテヴェルディの「オルフェオ」の序曲は、もしかしたら、そんな荘重な空気に包まれた、春の日の

夜明けを思って作られたのでは、という気がしてきます…。

 

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